安部のバスケ部編 #4 「天才ですから」

安部のバスケ部編 #4 「天才ですから」

311views

みなさん、ご機嫌よう。

すべてを託された男、安部です。

 

 

 

さて、2点差・残り0秒・フリースロー2本という

漫画でもめったに見られないような場面を迎えた安部。

果たしてフリースローを2本とも決め、延長戦へとつなぐことができるのか!?

 

 

 

 

 

 

 

「青7番!ハッキング!2ショット!」

 

 

 

終了のブザーが鳴り、シュートを外した。

 

もうこれで終わりかと誰もが諦めたそのとき…

鋭い笛の音とともに告げられた正真正銘のラストチャンス。

 

 

 

67対69

 

残り0秒

 

フリースロー2本

 

 

 

会場にはどよめきが広がっていた。

 

それもそうだ、こんなドラマはめったに見られない。

 

 

 

「安部、あとは任せたぞ。」

 

そう言って、メンバーは全員ベンチに下がっていく。

 

残り時間がない場合、フリースローを打つ選手以外はコートを去る。

 

コート上には、安部と主審、副審の3人のみ。

 

 

 

先ほどまでのどよめきがまるで嘘だったかのように、会場は静けさに満ちていた。

 

ベンチを見る。

 

皆の祈る姿が映る。

 

ボスは腕を組み、そしてかみしめる様にゆっくりと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

”この状況でフリースローを決め切れる高校生なんていない。”

 

 

 

 

 

 

 

まさかボスもこんな展開になるとは思っていなかったのだろう。

 

特大のブーメランとなってその言葉が返ってきていた。

 

しかし…

 

安部はこの大会が始まって以来、フリースローを外していない。

 

30本以上連続でだ。

 

その自負だけが俺を支える。

 

 

 

1本でも外せば、引退。

 

でも…これを入れたらヒーローだろ?

 

 

 

震える足を叩いた。

 

俺がやるしかない。

 

仲間の想いを一身に受けて…

 

 

 

 

 

ピッ!!!

 

フリースロー2ショット!」

 

 

 

審判からボールを受け取る。

 

いつもよりボールが大きく感じるのは緊張のせいか…

 

 

 

ダムダム……ダム……

 

 

 

張りつめる静寂の中、ルーティーンに入る…

 

 

 

シュッ…

 

 

 

弧を描くボールだけが音を立てる…

 

 

 

入れ…入ってくれっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガンッ…

 

ガガッ…

 

 

 

 

 

ザシュッ…

 

ダム…ダム…ダム……

 

 

 

「「「おーーー!!!!」」」

 

 

 

ドッと歓声が沸く。

 

 

 

「危ねぇ・・・」

 

 

 

周りから見れば何事もなく入れたように見えたのかもしれない。

 

しかし、当の本人はいつもと微妙に違うリズムに内心かなり焦っていた。

 

尋常ではないプレッシャーに押しつぶされそうだった。

 

いつものルーティーンがルーティーンにならない。

 

この心理状態はまずい…

 

 

 

 

 

ピッ!!!

 

フリースロー1ショット」

 

 

 

ま…まってくれ…

 

まだ心が落ち着いてない…

 

 

 

だが、無情にも運命をかけたボールは審判の手を離れ…

 

そして、俺の手に渡る…

 

 

 

 

 

ダムダム…ダム…

 

 

 

後戻りはできない。

 

自分を信じて打つ、ただそれだけだ。

 

 

 

 

 

シュッ…

 

 

 

皆の想いをのせたそのボールは…

 

いつもより高く弧を描いた…

 

 

 

 

 

 

 

ガンッ…

 

ガガッ…

 

 

 

 

 

 

 

ダム…ダム…ダム………

 

 

 

 

 

ピーッ!!!

 

 

 

「試合終了!」

 

 

 

 

 

想いをのせたそのボールがコートに転がっていた。

 

俺はその場から動けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「安部、整列だ。」

 

 

 

 

 

 

 

仲間が迎えに来た。

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん…本当にごめん………」

 

 

 

 

 

 

 

仲間が俺の肩を抱く。

 

 

 

 

 

 

 

「お前のせいじゃねぇよ。ありがとな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲間の想いに応えられなかった。

 

それでも支えてくれる仲間がいる。

 

ようやく涙が流れた。

 

 

 

 

 

「69対68で青、礼!」

 

「「「ありがとうございました!」」」

 

 

 

 

 

 

 

長かったバスケ部生活もこれで終わりだ。

 

楽しいことよりもつらいことの方が多かったように思う。

 

それでも、

 

バスケ部に入って本当に良かった。

 

かけがえのない仲間を得ることができたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

はい!ということでバスケ部編終了になります!

いまだにOB会とかで集まるとこの引退試合でいじられますよね笑

まぁでもいい経験できたかなと思います、

これ以上の緊張は人生で経験したことないですしこれからもないでしょうから。

 

それではまた来週お会いしましょう!

カテゴリー

アーカイブ