みなさん、ご機嫌よう。
奇跡の再会を果たす男、安部です。
さて、今週は脳神経科学から見たストレスのお話を。
まだまだ脳に関しては分かっていないことも多いため、
現時点で僕が知っている範囲で書いていきますが、
もし誤り等あれば是非ご指摘いただけますと幸いです。
ストレスは害悪でしかないのだろうか?
この問いの答えはおそらくNoだろう。
なぜNoと言えるか。
そもそも、もしストレスが害悪でしかないのであれば、
ヒトは進化の過程でその機能を失っているはずであるし、
実際、ストレスを感じたときに脳内で分泌されるノルアドレナリン(NA)には、
記憶力が向上したり、集中力を高める効果がある。
しかし一方で、このNAはその効果ゆえにあらゆる刺激に鋭敏になり、
逆に注意力が散漫になったり、周りの些細な音にイライラしてしまうこともあるだろう。
また、NAの影響でストレスホルモンであるコルチゾールが副腎皮質から放出され、
ストレスを溜めやすいといった悪循環が起きるのもまた事実だ。
つまり、適度なストレスはヒトが生きる上で重要であるが、
それが過剰になるとどうやらよろしくないようだ。
それではストレスが過剰な状態ではどのような問題が起きるのか。
ネイチャー誌に掲載されていたストレスに関する論文の図を引用して説明していこう。
Arnsten AF.Stress signalling pathways that impair prefrontal cortex structure and function.
Nat Rev Neurosci. 2009 Jun; 10(6): 410–422.
もしかしたら図が見えづらいかもしれないのでその場合はコチラを参照してください。
この脳の図は上が適度なストレス状況下(心理的安全状態)での脳の働き方で、
下が過剰なストレス状況下(心理的危険状態)での脳の働き方を示している。
重要なことはストレスの度合いによって脳は全く異なる働き方をするということだ。
まず、図の下の脳の右側(灰色になっている部分)は前頭前野と呼ばれる脳の部位(おでこのあたり)だが、
そこには”Loss of prefrontal regulation”と書かれている。
これはストレスが過剰にかかると”前頭前野の統制が失われる”という意味だ。
それでは前頭前野にはどのような役割があるのだろうか。
前頭前野の重要な役割はいくつかあるが、
特に図の上の脳に書かれたDLPFC、rlPFC、VMPFCという部位に注目してみよう。
DLPFCには”Top-down guidance of attention and thought(意識的な注意や思考)”、
rlPFCには”Inhibition of inappropriate actions(不適切な行動の抑制)”、
VMPFCには”Regulating emotion(感情の統制)”と書かれている。
つまり、過剰なストレス状況下において前頭前野の統制を失ったときヒトは、
何も考えられず頭が真っ白になり、
言ってはいけないことを口走ったり、こんなことするわけないといったことをやってしまったり、
感情の赴くままに泣きわめいたり、暴れたりしてしまうのだ。
「自殺するような人じゃなかったのに…」「普段は温厚な人なんだけどねぇ…」
といったことが起きてしまうのは、まさしくこのメカニズムによる。
脳のメカニズムを理解することで、
例えば近くにいる人がこういった言動を見せたとき、
ストレス過剰になっているのではないかと気づくことができるだろう。
ストレスにさらされ続ける今だからこそ、
正しくストレスについて知ることは重要であるように思う。
はい!ということで今週は脳神経科学から見たストレスの影響についてお話ししました。
まずは過剰なストレスを抱えることの怖さを知ってもらえたら何よりです。
次週は「じゃあストレスを軽減するにはどうしたらいいの?」という問いに
またしても脳神経科学の観点からお答えできればと思います!
それではまた来週お会いしましょう!