みなさん、ご機嫌よう。
ドン引きされてもめげない男、安部です。
さて、今回で最後になる安部の受験期シリーズ。
早稲田の合格発表を迎えた安部少年は何を想うのか…それでは参りましょう。
合格発表。
待ち遠しかったような来てほしくなかったような…
何とも不思議な気持ちのままこの日を迎えた。
2階のリビングには前日から泊りで遊びに来ていたバスケ部の仲間がいる。
そして僕は一人、3階の自室で時を待つ。
合格発表は9時から。
携帯電話で現在の時刻を確認する。
8時59分。
「ふぅ・・・」
一息吐いて、合否確認用の電話番号を入力する。
あとは発信ボタンを押すだけだ。
どんな結果だろうと悔いはない、俺は全力でやり切った…そうだろ?
そう、自分に問いかける。
時刻は9時。
受験票を片手に発信ボタンを押す。
ポチッ
・・・トゥルルルルル
「受験番号を入力してください・・・」
受験票を指差し確認しながら、正確に受験番号を打ち込んでいく。
そして・・・
▽
「落ちました~!!!」
元気よく2階に降り立った僕を仲間が笑いながら迎える。
A「遅ぇわ!」
安「いや、まさか俺が落ちるわけないと思って3回確認したよねw」
B「よく心が折れなかったなw」
安「涙の1つでも出てくるかと思ったけど、もはや清々しいわw」
A「あんだけやってダメなら確かに諦めもつくわな。」
C「俺の胸…貸そうか?」
B「あざーす」
「「「お前じゃねぇ!」」」
そんな他愛もない会話が嬉しかった。
悔しさとか悲しさとかは本当に一切なく、ただただその事実を受け入れていた。
悔いの残る余地などない、それほどに濃密な半年間を過ごしていたんだ。
たとえ落ちたとしても、それだけは揺るぎないものとして俺の中に残っている。
▽
午前中遊んだあと、午後はお世話になった塾へ受験報告の予定だった。
塾の仲間と駅で待ち合わせて、我が学び舎へと向かう。
安「おーお前ら久しぶり…でもねーかw」
A「まぁずっと毎日顔合わせてたからなぁ。2週間でも久しく感じるわ。」
B「で、みんなどんな感じ?」
A「俺はなんとか慶應受かったよ。」
安「マジか!おめでとう!!!」
B「さすがA。おめでとう。」
A「ありがと。で、お前らは?」
B「俺は慶應がダメだったから、理科大に行くつもり。安部は?」
安「俺は早稲田落ちて、あとは筑波の結果待ち。」
B「そっかー、受験ってのはやっぱり厳しいもんですな。」
安「そうですな…まぁでも俺らはやり切ったろ。」
A「そうだよ。胸張って報告に行こうぜ!」
そんな近況報告も程々に、僕たちは塾へと向かった。
走り慣れた道を今日はゆっくりと、噛みしめながら歩いた。
塾のドアを開けると、そこには何人かのチューターさんがいた。
各々から受験報告をして、お疲れ様、よく頑張ったねと声をかけてもらった。
と、そのときだった。
奥の部屋から僕が一番お世話になった、そして一番尊敬していたチューターの阿部さんが現れた。
阿「おー泰祐か、どうだった?」
安「阿部さん…俺………」
悔しくなんてない。悲しくなんてない。
そのはずだったのに・・・涙が止まらなかった。
安「期待に…応えられなくて…すみません………」
自分のやってきたことに一切の後悔はない。
けど、今まで応援してくれた、支えてくれた人たちの期待に応えられなかった。
ただそれが悔しかった。本当は死ぬほど悔しかったんだ。
阿部さんは何も言わずに僕を抱きしめた。
僕は何度もすみません、すみませんと言いながら泣いた。
阿「謝ることなんて何一つない。お前はよく頑張った。それだけで十分だ。」
その言葉に救われた。
期待には応えられなかった。
けど、それは決して今までの努力が無駄だったことを証明するものではない。
その努力した経験がいつか、いつの日かきっと役に立つ。
今は結果が出せなくてもいい。長い人生、いつだって取り返せる。
より豊かで、より幸せにあふれた人生を目指して。
ふと我に返って周りを見渡すと、なぜかチューター全員が号泣していた。
急に恥ずかしくなった僕は、
「今までありがとうございましたっ!」
と感謝を述べて、塾を去った。
走り慣れたいつもの道を、軽やかに走った。
今度は嘘偽りなく、本当に清々しい気持ちだった。
はい!ということで安部の受験期シリーズはこれにて終了となります。
努力は必ず報われるわけではないけど、努力した経験は必ずためになるということ学んだ受験生活でした。
うちの子たちも明日、国立前期になります。どうか悔いの残さぬよう、やり切ってほしいと切に願います。
それではまた来週お会いしましょう!